欧博百家乐【詳細】韓国 ユン大統領の弾劾は妥当 憲法裁判所 大統領は罷免・失職 60日以内に大統領選

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去年12月に「非常戒厳」を宣言した、韓国のユン・ソンニョル大統領の弾劾裁判を審理してきた憲法裁判所は4日午前、弾劾は妥当だとする決定を言い渡しました。

憲法裁判所は「軍と警察を国会に投入して憲法上の権限の行使を妨害することで、国民主権や民主主義を否定するとともに、布告令を出して国民の基本権を侵害した」と指摘しました。

その上で「国家の緊急権を乱用する歴史を繰り返し、社会、経済、政治、外交のすべてで混乱を引き起こした。憲法を守る責務を放棄し、国民の信任を裏切った」などと述べ、8人の裁判官全員の意見が一致したと説明しました。

これによってユン大統領は直ちに罷免されて失職し、その後、弁護団を通じて「未熟な私を支持して応援してくださった皆様に深く感謝します。皆様の期待に添えず、非常に残念で申し訳ありません」とするメッセージを出しました。

また、大統領側の弁護士は「法理的に納得できない。完全に政治的な決定としか見ることができず非常に残念だ」と述べました。

4日の決定を受けて、憲法の規定により60日以内に大統領選挙が行われることになり、政府は近く選挙の日程を決める見通しです。

複数の韓国メディアは、6月3日の投票が有力だと伝えていて、今後、与野党による支持拡大に向けた動きが活発化する見通しです。

その大統領選挙に向けて、韓国の中央選挙管理委員会は事務所の設置などを許可する「予備候補者」の登録受け付けを4日に始めました。

また、海外に住む駐在員や留学生などを対象にした在外投票の事前登録の受け付けも始まりました。

大統領を象徴するとされる旗が下ろされる

ユン大統領が罷免された直後、大統領の執務室が入る庁舎では、掲げられていた大統領を象徴するとされる旗が下ろされました。

韓国メディアによりますと、この旗は大統領在任中に掲げるものだということです。

ユン大統領 与党幹部と面会「ぜひ勝利を」

ユン大統領は4日夕方、大統領公邸を訪れた与党「国民の力」の幹部らと面会しました。

この中でユン大統領は、党のこれまでの取り組みに感謝の意を示した上で「応援してくれた国民と支持者に申し訳ないとともに、感謝の気持ちを持っている。この国がうまくいくことを願っている」と伝えました。

さらに「大統領選挙まであまり時間がないので、党を中心にしっかり準備し、ぜひ勝利してほしい」とも述べたということです。

職務代行の首相「選挙管理に最善を期す」

ユン大統領が罷免されたことを受けて、大統領の職務代行を務めるハン・ドクス(韓悳洙)首相は4日午前、国民向けの談話を発表し「憲政史上2番目に現職の国家元首が弾劾される不幸な状況が起きたことを重く受け止める。大統領代行として、国家の安全保障と外交に空白がないように、堅固な態勢を維持する」と述べました。

また「通商分野など当面の懸案の対処に支障のないように万全を期し、国民が不安に感じないよう治安秩序を保って災害にも徹底的に備える」と述べました。

その上で「次期政権が支障なく発足できるよう、選挙管理に最善を期す。政府は、国民のくらしと経済が揺るがないよう、役割を忠実に遂行するため全力を尽くす」としています。

韓国 与野党の反応

ユン大統領の罷免について与党「国民の力」のトップ、クォン・ヨンセ(権寧世)非常対策委員長は「憲法裁判所の決定を重く受け止め、謙虚に受け入れる。国民のみなさんに心からおわび申し上げる」と述べました。

また、ユン氏の支持者による反発を念頭に「いかなる場合でも暴力や極端な行動があってはならない」と呼びかけました。

一方、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は会見を開き「現職大統領が2度も弾劾されたことは、再びあってはならない韓国憲政史上の悲劇だ。政治が国民と国家の希望になるように最善を尽くす」と述べました。

大統領の支持者からは落胆の声 涙を流す人も

憲法裁判所が言い渡しを始めると、大統領公邸前で集会を開いていたユン大統領の支持者たちは、言い渡しの様子を伝えるスクリーンを見守りました。

そしてユン大統領の罷免が言い渡されると、支持者からは落胆の声が上がったほか、涙を流す人も見られました。

決定の言い渡しを聞いた50代の女性は「決定は受け入れられない」と述べながら、涙を流していました。

韓国の通信社 連合ニュースによりますと、決定の言い渡しから数分後に憲法裁判所の近くで、ユン大統領の支持者が棒で警察の車両の窓を割り拘束されたと伝えましたが、これまでのところ大きな混乱はみられていません。

野党支持者 決定に大きな歓声

一方、憲法裁判所から500メートルほど離れた野党支持者の会場には、大勢が集まり「ユン大統領は罷免されるべきだ」とか「大統領を退陣させよ」などと叫びながら裁判所の判断を待ちました。

会場に設置されたモニターでは裁判所の様子が生中継で伝えられ、集まった人たちは決定が言い渡されると、一斉に立ち上がって大きな歓声をあげました。

そして抱き合って喜んだり「民主主義の勝利だ」と叫んだりして喜びを分かち合っていました。

野党側の集会に参加していた30代の女性は「ユン氏は国民の信頼を裏切ったので、憲法裁判所の判断は当然の結果だと思う」と話していました。

20代の男性は「非常戒厳が出されてからきょうまで、日常がまた戻ることがあるのかと不安な時間を過ごした。次の大統領には国民の話を聞く人になってほしいし、安定した政権運営をしてもらいたい」と話していました。

男性は「憲法裁判所の判断は、常識的で合理的な人であれば当然理解出来る判断だと思う。社会に混乱が起きてしまったので、それを正常化する必要がある。次の大統領には弱者や少数派に配慮できる人になってほしい」と話していました。

60代の女性は「民主主義を市民の力で立ち直らせることができた。私は高校時代に軍事政権で非常戒厳を経験したので、状況を正せると信じて集会に熱心に参加した。今後の政権には民主主義を守った市民の努力を大切に社会を安定させてほしい」と話していました。

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韓国メディア「選挙は6月3日が有力」 与野党の動きは

ユン大統領の罷免を受けて、韓国では60日以内に後任の大統領を選ぶ選挙が実施されます。

4日からちょうど60日後は6月3日で、通信社の連合ニュースや有力紙「朝鮮日報」などの現地の複数のメディアは、大統領選挙の投票日は6月3日が有力だと報じています。

韓国では与野党とも、ユン大統領の罷免によって大統領選挙が行われる展開もにらみながら、支持の拡大に向けた動きを見せてきました。

弾劾を求めてきた革新系の最大野党「共に民主党」では、前回の選挙でユン大統領に僅差で敗れたイ・ジェミョン代表が世論調査で最も人気が高く最有力候補とされています。

国内各地を精力的に回りながら、無党派層を含めた支持の拡大を図るとともに、いまも支持者が多いムン・ジェイン元大統領と面会するなど、党内基盤の強化にも力を入れています。

一方でイ代表は、複数の罪で起訴されて刑事裁判が行われていて、このうち公職選挙法違反の罪に問われた2審の裁判では無罪が言い渡され、イ代表としては選挙に向けた追い風にしたい考えです。

これに対して保守系の与党「国民の力」は、これまでユン大統領の弾劾が決定していなかったため、大統領選挙に向けての表立った党としての活動は控えてきました。

ただ選挙を見据えて、現職の閣僚や自治体のトップなどが水面下で準備を進める動きも取り沙汰されていました。

韓国の世論調査 次期大統領は

韓国の世論調査機関「韓国ギャラップ」は、3日までの3日間、1001人を対象に将来の大統領に誰がふさわしいか聞きました。

それによりますと
▽最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が34%と最も多く
▽キム・ムンス(金文洙)雇用労働相が9%
▽与党「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)前代表が5%
▽南東部テグ(大邱)のホン・ジュンピョ(洪準杓)市長が4%
▽ソウルのオ・セフン(呉世勲)市長が2%などとなっています。

4日発表の調査 「弾劾賛成」が57% 「反対」が37%

また「韓国ギャラップ」の調査では、去年12月に「非常戒厳」が宣言された翌週には「ユン大統領の弾劾に賛成する」と答えた人が75%にのぼり、「反対」の21%を大きく上回りました。

1月中旬には「賛成」と答えた人が57%まで減りましたが「非常戒厳」からこの3か月あまりで常に50%以上の人が「賛成」と答え、4日発表された調査では「弾劾賛成」が57%、「反対」が37%でした。

一方、政党支持率の調査では「非常戒厳」の2週間後に最大野党「共に民主党」が48%、与党「国民の力」が24%と大きく差がつきました。

ただ、ことし1月中旬には最大野党が36%、与党が39%と、与党が逆転しました。

これについて韓国メディアは、与党の結束が強まったことに加え、大統領の代行を務めた首相に対しても弾劾議案を可決させたことに、最大野党への国民の批判が高まったことが背景にあると報じていました。

その後、2月に入ると再び最大野党が支持率でリードし、4日発表された調査では、最大野党「共に民主党」が41%、与党「国民の力」が35%でした。

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【詳しく】憲法裁 全員一致で罷免を決定 どのように判断か

韓国の憲法裁判所は、8人の裁判官が全員一致でユン・ソンニョル大統領の罷免を決定しました。「非常戒厳」の違法性をどのように判断したのか、詳しくお伝えします。

【「非常戒厳」の違法性】
ユン大統領は、野党が弾劾訴追を繰り返したり、政府が提出した予算案を削減しようとしたりして、国政をまひさせていることを国民に知らせるためだったと主張していました。

これに対して、憲法裁判所のムン・ヒョンベ所長代行は決定の理由を読み上げたなかで「ユン大統領が主張する、国会の権限行使による国政のまひ状態や不正選挙の疑惑は、政治的、制度的、司法的な手段を通じて解決すべき問題であって、兵力を動員して解決できるものではない。平時の権力行使で対処できるため、国家緊急権の行使を正当化することはできない」としています。

そして、公開された憲法裁判所の決定文では「憲法および戒厳法が定めた要件を満たさずに戒厳を宣布した」として憲法や戒厳法に違反するとしています。

【国会への軍投入の違法性】
弾劾裁判では、ユン大統領が「非常戒厳」を宣言した際に、軍を国会に投入するよう指示したことや、主要な政治家の拘束を指示したかどうかについても争われました。

憲法裁判所のムン所長代行は「ユン大統領は軍や警察を投入して国会議員の出入りを統制する一方で、国会議長や各政党の代表などを引きずり出すように指示することで、国会の権限行使を妨害したため、国会の戒厳解除の要求権を付与した憲法の条項に違反し、国会議員の審議表決権、不逮捕特権を侵害した」と述べました。

そのうえで「政治的な目的で兵力を投入することで、国家の安全の保障と国土の防衛を使命として国のために奉仕してきた軍人たちを一般市民と対じさせた。軍の政治的中立性を侵害し、憲法による軍統帥の義務に違反した」としています。

【市民への影響も違法】

「非常戒厳」に伴って、市民の活動や権利を著しく制限し、政治活動の禁止や、メディアに対する統制などを盛り込んだ「布告令」が発表されました。

これについては「非常戒厳のもとで、基本権を制限するための要件を定めた憲法に違反して、国民の政治的基本権や団体行動権、職業の自由を侵害した」と述べ、国民に対しても違法行為が及んだとしました。

【国民に衝撃と混乱】
最後に憲法裁判所のムン所長代行は「大統領の権限はどこまでも憲法によって与えられるもので、ユン大統領は最も慎重に行使されるべき権限である国家緊急権を、憲法で定めた限界を超えて行使し、大統領の権限行使に対する不信を招いた」としています。

そして「ユン大統領は憲法と法律に違反して、戒厳を宣布することで、国家緊急権乱用の歴史を繰り返し、国民を衝撃に陥れ、社会、経済、政治、外交、全ての分野に混乱を引き起こした。国民みなの大統領として自身を支持する国民だけでなく社会共同体を統合させるべき責務に違反した。罷免によって憲法を守る利益を得ることは、大統領の罷免に伴う国家の損失を圧倒するほどに大きいことが認められる」と述べました。

国際部デスク解説【動画も】 4日11時30分の特設ニュースで放送(6分57秒) ※データ放送ではご覧いただけません

Q. 言い渡された内容のポイントは
ユン大統領の弾劾が妥当だとする決定理由の言い渡しのなかで、ユン氏側の主張のように、そもそも国が非常戒厳を出すほどの危機状態とみることができない、そしてユン氏は野党の横暴などを知らせる目的で戒厳を出したと主張しているが、そもそも戒厳を出す要件にに違反しているという内容でした。

去年の「非常戒厳」そのものが憲法違反だとしています。

「非常戒厳」にかかわるあらゆる行為を憲法違反、大統領としての義務違反、法律違反と指摘していました。

Q. 韓国国民はどうとらえていたのか
世論調査会社「韓国ギャラップ」の調査では、「弾劾賛成」が一貫して50%以上を占めています。先週の調査では「弾劾賛成」が60%、「反対」が34%でした。

多くの韓国の人たちにとって、大統領による「非常戒厳」は衝撃をもって受け止められました。中には、民主化運動が弾圧された軍事政権時代を思い起こしたという市民もいます。

なんとか早く、この混乱した政治状況が収束に向かってほしいというのは、韓国市民の切実な願いです。

その一方で、数としては弾劾賛成派より少数ですが、ユン大統領を支持して弾劾に反対する人たちの集会も盛んに行われています。

ただ参加者の中に、根拠が不確かな政治系ユーチューバーの情報をもとに、それと同じ主張を声高に叫ぶ人の姿もみられます。

ユン大統領の弾劾を求める革新系支持の人たちと、大統領支持の保守系支持の人たちは互いに対話ができない、話が通じない状況になっています。
「非常戒厳」、「弾劾」が社会の分断を深刻に深めたといえます。

Q. これまでの弾劾裁判は
過去には2回、弾劾裁判が行われています。初めては2004年で、当時のノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領です。このときは、弾劾は妥当ではないという判断が示されて当時のノ・ムヒョン大統領は直ちに職務に復帰しました。

2回目は2017年に弾劾妥当の判断が示された当時のパク・クネ(朴槿恵)大統領の弾劾裁判です。このときは弾劾が妥当の判断が言い渡されると、パク氏は直ちに失職し、韓国はすぐさま大統領選挙に向けて動き出しました。

Q. 言い渡し後の動きは
韓国は、直ちに大統領選挙に向けて本格的に動き出します。それとともに、注目すべきは憲法裁判所の決定に対してユン氏本人がどう反応するかです。

今回、弾劾をめぐって韓国では保守系と革新系、またそれぞれを支持する人たちは、政治勢力、意見の異なるものどうしが互いに話が通じない、まさに分断した状況が相当に深まりました。

罷免の決定について、ユン大統領が「とても承服できない」などとメッセージを発して、支持者に冷静になるように呼びかけない場合、一部の過激な支持者たちの主張や行動がエスカレートしないか懸念も出ています。

そうなると、大統領選挙に向けた政局にも影響がでかねません。ユン氏がこのあと、何を語るのか、冷静な呼びかけをするのか、それとも結果を否定するようなコメントだけを出すのか注視する必要があります。

Q. 大統領選挙までの流れは
大統領が罷免された場合、前回2017年のときは5日後に臨時閣議が開かれて、大統領選挙の日程を正式に決定しました。

法律では60日以内に選挙をしないといけませんので、この時はちょうど60日後に選挙が行われました。

Q. 刑事裁判が並行して行われている
ユン大統領は今回の「非常戒厳」をめぐって2つの裁判に臨んでいます。1つは、4日の弾劾裁判は刑事責任を問うものではありません。

もう1つは刑事裁判で、ユン大統領は「非常戒厳」によって内乱罪で起訴されています。大統領は現職中は刑事訴追されないのですが、内乱罪だけは起訴できます。

ユン大統領は一度逮捕され、その後、司法機関の手続きが適切に行われていなかったとして、裁判所がユン大統領の釈放を決定しました。

このためユン大統領は、拘束されていない状態で今後は刑事裁判に臨みますが、最高裁まで続く見通しなので判決確定には時間がかかりそうです。

大統領が罷免された場合でも、刑事裁判に伴うユン氏の発言やメッセージが、大統領選挙に向けた政局に影響を及ぼすことが考えられます。専門家の中からは「ユン・ソンニョル劇場は、まだまだ続く」という声もきかれます。

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専門家「妥当な結果 全員一致が極めて意義深い」

ユン大統領に対する弾劾が妥当だとする決定が出たことについて、韓国政治に詳しい神戸大学の木村幹教授に話を聞きました。

木村教授は非常戒厳について「重大な憲法違反、違憲性というのが明らかだった」として「決定は妥当な結果だ」と述べました。

その上で「裁判官8人の意見が全員一致したというのが一番大きいポイントだ。与野党、さらには世論が左右に分裂して対話ができないという事態が一番深刻な問題で、裁判所として時間をかけて全員一致を目指したのだと思う。司法は韓国社会の決定的な分断を防いだという見方もできるわけで、そういう意味では極めて意義深い決定だった」と述べました。

また今後の大統領選挙について、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン代表が最有力候補とされる中で、与党「国民の力」がいかにまとまって候補者を決められるのかが注目されるとしています。

そして、韓国で政治的な左右の分断が深まっているとして「国民の和解、共通の目標を探していくのが次の韓国政治の課題で、大統領選挙で目指すべきものだろう」と指摘しました。

【日本国内の反応】 石破首相「日韓の緊密な連携は極めて重要」

石破総理大臣は、衆議院内閣委員会で「評価すべき立場にはないが、いかなる政権になってもことしは国交回復60周年という年だ。日韓の協力は安全保障面のみならずわが国の独立と平和、地域の平和と安定にとって極めて重要だと認識している。大統領選挙が行われることになるが、韓国の民主主義が判断されることであり、どういう状況になっても日韓の緊密な連携は極めて重要だという認識のもと政府として最重要課題として取り組んでいきたい」と述べました。

外務省幹部「日韓関係の重要性は変わらず」

外務省幹部は、NHKの取材に対し「他国の内政に関わることなのでコメントは控えるが、今後、大統領選挙が行われるので動向を注視していく」と述べました。

その上で「日韓両国は、さまざまな課題で協力する隣国で、日韓関係や日米韓3か国の連携の重要性は変わらない。日韓両国間でしっかり意思疎通していきたい」と述べました。

また「韓国内の混乱も懸念されるので、日本人の安全確保に向けて状況をよく見ていきたい」と述べました。

「非常戒厳」以降の経緯 【動画 2分10秒】※データ放送ではご覧いただけません

韓国のユン・ソンニョル大統領は、去年12月3日の夜、予算案に合意しない野党側の対応などを理由に「非常戒厳」を宣言しました。

これを受けて戒厳司令官が、政治活動の禁止や、メディアに対する統制などを盛り込んだ「布告令」を発表し、軍の部隊が国会の建物に突入する事態となりました。

翌4日の未明に、韓国の国会は「非常戒厳」の解除を要求する決議案を可決し、ユン大統領は宣言から6時間ほどで「非常戒厳」を解除すると発表しました。

その日のうちに、最大野党「共に民主党」など野党6党が、ユン大統領の弾劾を求める議案を国会に提出し、一度は廃案となったものの、12月14日の本会議で与党からも賛成する議員が出て、弾劾の議案が可決され、ユン大統領の職務は停止されました。

これを受けて、弾劾が妥当かどうかを判断する憲法裁判所の弾劾裁判が12月末から始まりました。

弾劾をめぐる手続きが進められるのと同時に、捜査機関は内乱などの疑いでユン大統領に対する捜査を進めました。

拘束令状をとった合同捜査本部はことし1月3日に執行を試みましたが、このときは大統領警護庁に阻まれて令状執行を断念。

およそ2週間後に態勢を整えたうえで改めて令状執行に踏み切り、内乱を首謀した疑いで大統領を拘束しました。

その後、ユン大統領は逮捕され、1月26日には内乱を首謀した罪で起訴されました。

韓国で現職の大統領が逮捕・起訴されたのは初めてです。

ユン大統領は1月以降、ソウル近郊にある拘置所に拘束されましたが、この間も、憲法裁判所では弾劾裁判が続けられ、2月下旬まで行われた弁論にはユン大統領自身も出席して「非常戒厳」の正当性を主張してきました。

一方、ソウルの地方裁判所は先月7日、大統領の拘束の手続きが適法だったかどうか疑問の余地があるなどとして拘束を取り消す決定を出し、翌8日にユン大統領は釈放されました。

ユン・ソンニョル大統領とは 【動画 3分27秒】※データ放送ではご覧いただけません

ユン・ソンニョル大統領は、首都ソウル出身の64歳。

名門のソウル大学を卒業したあと、司法試験に合格して検察官になりました。

保守系のパク・クネ(朴槿恵)元大統領やイ・ミョンバク(李明博)元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底捜査した手腕が、革新系のムン・ジェイン(文在寅)前大統領に評価され、2019年に検察トップの検事総長に抜てきされました。

その後、ムン前大統領の側近の疑惑を追及するなどして政権との対立が深まり、検事総長を辞任しましたが、真っ向から政権と対じした姿が支持され、政界入りへの待望論が高まりました。

そして、政治経験が全くない中で、2021年、当時の保守系最大野党「国民の力」に入党し、大統領選挙の公認候補に選出されました。

そして、2022年3月の大統領選挙で、当時の与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏に0.73ポイントの差で勝利し、5月に大統領に就任しました。

国内政策では、労働・教育・年金の分野での改革に意欲を示しましたが、就任当初から国会では野党が多数で、政府が提出した法案が野党に否決されるケースも目立ちました。

こうした状況を打開しようと、去年4月に行われた総選挙で少数与党からの脱却を目指しましたが、与党は大敗し、野党に国会の主導権を握られる状況が続いていました。

一方、大統領の権限が強い外交政策では、自身のカラーを発揮し、前のムン・ジェイン政権による北朝鮮への融和的な態度を転換して厳しく臨む姿勢を打ち出してきました。

また、「戦後最悪」とも言われた日韓関係の改善に強い意欲を示し、おととし3月には、両国関係の最大の懸案の1つである、太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題について韓国政府としての解決策を提示しました。

そして、その発表の10日後に日本を訪問して当時の岸田総理大臣と会談し、その後も首脳どうしの相互訪問「シャトル外交」を行うなど、一貫して日韓関係の改善に力を入れてきました。

2025-04-07 23:43 点击量:6