欧博官网【詳しく】ガザ地区 イスラエルとハマス 6週間停戦合意で人質解放も イスラエル軍攻撃で犠牲者
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おととし10月以降、ガザ地区で戦闘を続けてきたイスラエルとハマスは15日、仲介国のカタールでの協議を受けて、今月19日から6週間、停戦することで合意しました。
停戦の期間中にハマス側が33人の人質を解放し、イスラエル側は刑務所に収容しているパレスチナ人を釈放することや、ガザ地区の人口密集地域から軍を撤退させることなどで合意しました。
さらに、この間協議を続け、次の第2段階や第3段階で恒久的な停戦や復興などを目指すとしています。
イスラエルメディアによりますと、イスラエル政府は16日にも停戦合意を正式に承認するための閣議を開くことにしていて、極右政党の閣僚からの反対が予想されるものの、停戦合意は承認される見通しだと伝えています。
ただ、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、イスラエル軍がガザ地区での攻撃を強化していて、停戦合意の発表後、少なくとも40人が死亡したと伝えています。
ガザ地区では、1年3か月以上にわたる戦闘で、これまでに4万6000人以上が死亡していて、イスラエル軍の攻撃で犠牲者が増え続ける中、合意どおりの停戦につながるのか、予断を許さない状況が続いています。
カタールのムハンマド首相兼外相は15日、首都ドーハで会見を行い、イスラエルとイスラム組織ハマスが停戦と人質解放で合意したと発表しました。
それによりますと、停戦と人質解放は今後、3段階に分かれて行われ、
第1段階は、今月19日から始まり6週間にわたって停戦するとしています。
停戦期間中にハマスは33人の人質を解放する一方、イスラエルは刑務所に収容しているパレスチナ人を釈放します。また、イスラエル軍はガザ地区の人口が密集する地域から撤退し、住民がそれぞれの地域に帰還できるようにするとしています。
さらにこの間、住民が必要としている人道支援物資の搬入と配布を拡大し、ガザ地区にある医療施設の改修なども行うとしています。
そして、第2段階と第3段階について協議を続け、恒久的な停戦を目指すとしています。
また、双方に対し、これ以上の犠牲を出さないためにも、合意を履行することを強く求めた上で、履行を監視する拠点をエジプトの首都カイロに設置し、仲介役を担ったカタールとエジプト、それにアメリカの合同チームが監視にあたると説明しました。
バイデン大統領はホワイトハウスでの演説で、3つの段階からなる停戦と人質解放の合意の詳細について説明しました。
それによりますと第1段階は停戦期間を6週間とし、この間にイスラエルがガザ地区の人口密集地域から軍を撤退させるということです。これにより、避難しているガザ地区の住民が元の居住地に戻ることができるほか、人道支援の増加につながるとしています。
また、イスラエルは刑務所に収容しているパレスチナ人数百人を釈放するということです。
これに対してハマスは人質のうち、女性や高齢者、それにけがをしている人などを解放するとしています。この6週間のうちにイスラエルは第2段階としての恒久的な停戦、すなわち最終的な戦闘の終結に向けて協議します。
第2段階ではガザ地区からすべてのイスラエル軍が撤退するのに対し、ハマスはイスラエル軍の男性兵士を含む残りの人質を解放し、一時的な停戦は恒久的な停戦になるとしています。
そして、最後の第3段階では、ハマスは死亡した人質の遺体を引き渡し、ガザ地区の復興計画が始まるということです。
イスラエル首相府の発表によりますと、ネタニヤフ首相は15日夜、アメリカのトランプ次期大統領と電話会談し、人質の解放に向けた支援と、数十人の人質とその家族の苦しみを終わらせることを手助けしてくれたことに謝意を伝えました。
ネタニヤフ首相は「アメリカはイスラエルと協力しガザ地区が再びテロの温床にならないようにする」としたトランプ氏の発言を称えた上で、近くワシントンで会談することで一致したということです。それからネタニヤフ首相はバイデン大統領と電話会談し、人質の解放で進展があったことに謝意を伝えました。
また、停戦合意の発表を受けてイスラエルのヘルツォグ大統領は15日、会見を開き「私たちはいま重大な局面にいる。イスラエルの議会と内閣に停戦合意を受け入れ、承認するよう求める」と述べました。
そのうえで「安全保障上の利益とイスラエル国民全員の安全を守るためには、あらゆる外交や安全保障の手段を活用しなければならないことは明らかだ。最後の1人まで早急に帰国させる」と述べ、すべての人質が帰国するまで全力を尽くす考えを示しました。
イスラム組織ハマスは15日、SNSに「停戦の合意は15か月以上にわたるガザ地区での偉大なパレスチナの人々のたくましさと勇ましい抵抗の結果だ。解放と帰還というわが民族の目標を達成するための敵との戦いにおける節目となるものだ」と投稿しました。
そのうえで「ガザ地区の人々との連帯を表明し、侵略を止めるのに貢献したすべての関係者に感謝している」として、仲介国のカタールやエジプトに謝意を示しました。
ガザ地区南部のハンユニスでは、15日夜電気が通っているテントに大勢の人たちが集まり、停戦協議のニュースを伝える中東のテレビ局の放送を固唾をのんで見守っていました。
NHKガザ事務所のカメラマンが撮影した映像では、イスラエルとハマスが停戦と人質の解放で合意したと伝えられると、人々が大きな歓喜の声を上げたり指笛を鳴らしたりして、喜ぶ様子が見られました。
ガザ地区北部から避難してきたという男性は「この感情は言葉では表せません。ガザ地区は喜びでいっぱいです。ついに私たちの苦しみとこの戦争が終わります」と話していました。
別の男性は「停戦はうれしいですが、これまでに犠牲になったりけがをしたりした人たちのことを思うととても悲しいです」と話していました。
エジプトに避難の住民からも喜びの声
エジプトに避難しているガザ地区の住民からは喜びの声が聞かれました。ガザ地区と境界を接するエジプトにはおととし10月にイスラエルとハマスの戦闘が始まって以降、10万人近い人が避難しているとされています。
停戦合意の発表直後の15日夜、首都カイロにある避難者が多く集まるレストランを訪れると、お祝いとしてお菓子がふるまわれていたほか、客や店員が音楽にあわせて拍手をするなどして喜ぶ様子が見られました。
ガザ地区に夫などが残っているという女性は「どれだけ平和がうれしいか言い表すことができないくらい幸せです。家族に再会し、自宅に戻り、ふるさとの風を感じたいです」と話していました。
また、現在はカイロでレストランの経営に携わる男性は「ガザ地区にいる家族が生きているかどうか毎日、不安でいっぱいでした」と停戦合意を歓迎する一方、ガザ地区への帰還については「何も残っていないガザに戻るのは難しいです」と話していました。
イスラエルとハマスが停戦と人質の解放で合意したことについて、エルサレムでは市民から歓迎する声が聞かれました。
40代の弁護士の男性は、「1年以上、戦い続けてきても何も達成できなかった。合意に至ったのは適切で、双方にとってよいことだと思う。6週間の停戦ではなく、すべてを終わりにしてもらいたい。もうたくさんだ」と話していました。
17歳の学生は「交渉相手のハマスはテロリストであり、信用できないが、トランプ氏をはじめ世界が見ているので、合意が守られることに期待したい」と話していました。
一方、友人がハマスに殺害されたという20代の女性は、「人質が戻ってくるのはうれしいが、テロリストと交渉し、屈しているようでもあり、つらくもある」などと複雑な胸の内を語っていました。
停戦合意の発表を受けて、ハマスの後ろ盾となってきたイランの最高指導者ハメネイ師は16日、SNSで声明を出し「きょう世界は、ガザの人々の忍耐がイスラエルを退けるのを目撃した。イスラエルは最も恐るべき罪を犯して数千人の子どもや女性を殺害し、最後には負けたと歴史書には記されるだろう」として、停戦合意を歓迎しました。
また、イランの軍事精鋭部隊、革命防衛隊も声明を出し「パレスチナの偉大な勝利だ」としたうえで、レバノンのシーア派組織ヒズボラや、イエメンの反政府勢力フーシ派、それに、イラクの民兵組織といったイランが支援する中東各地の武装組織が、これまでハマスに連帯を示し、イスラエルへの攻撃に加わってきたことを称賛しました。
そのうえで「イスラエルによる違反行為の可能性を警告し、新たな軍事行動に対しては迎え撃つ準備を維持していることを強調する」として、停戦合意が破られた場合には各武装組織からの攻撃が再開される可能性を示唆し、けん制しました。
Q.今回、イスラエルとハマスが停戦と人質解放の合意に至ったと発表。現地の受け止めは?
A.報道を受けて、ガザ地区で死の危険と隣り合わせの毎日を送ってきた住民からは、喜びの声が上がっている。イスラエル側の市民からも人質の解放がようやく実現するため歓迎する声があがっているが、停戦が守られ、すべての人質が解放されるまで予断を許さないとして慎重な見方もある。
合意に至った背景には、ハマスを取り巻く環境がここ最近で大きく変化し、一定の譲歩を迫られたことがある。ハマスは1年以上にわたってイスラエル軍のガザ地区からの撤退と完全な停戦を保証するよう強硬に要求してきた。シンワル最高幹部が殺害され、ハマスへの連帯を示してイスラエルへの攻撃を続けていたレバノンのヒズボラが停戦に合意したことで、ハマスが孤立化を深め、これまでより譲歩する姿勢を示していると報じられている。
また、アメリカのトランプ次期大統領の存在も大きかったと言える。今月20日に迫る就任を前に、合意の実現に意欲を示し、ハマスに圧力をかけるとともに11日には特使をイスラエルに派遣してネタニヤフ首相に直接、働きかけていた。
イスラエル国内では強硬な姿勢を維持し続けるネタニヤフ首相への批判も強まっていて、イスラエルとしても、こうした国内外の意見を無視できなかったとみられる。
Q.停戦は守られるのか。
A.停戦が守られるか、決して楽観はできない。おととし11月から12月にかけて7日間続いた、戦闘の休止の期間には、人質の解放が順調に進まず、少しずつ休止の期間を延長する綱渡りとも言える状態が続いた。停戦期間中はハマス側が段階的に人質を解放することで停戦が続くものとみられるが、合意が確実に守られるかは予断を許さない状況だ。今回合意した6週間の停戦を守り、恒久的な停戦につなげることができるかが焦点となる。
Q.なぜ今、イスラエルとハマスは停戦合意に至ったのか?
A.バイデン政権によるいわば最後の仲介努力に加えて、トランプ次期大統領が加わったことが大きいと思う。連携して、トランプ氏の就任日である20日までに合意するよう強く働きかけていた。バイデン氏とトランプ氏は政策面で全く意見が異なるが、ガザ地区の対応では同じ考え方だった。とくに、トランプ氏は就任前だがカタールの協議に特使を派遣し、ハマスに対してはみずからが就任するまでに人質を解放しなければ、「大きな報いを受ける」と圧力をかけていた。
ガザ地区の死者が4万6000人を超え、アメリカから強まっていたいわば2重の圧力をイスラエル、ハマスは無視できなかったといえる。
Q.ガザ地区の停戦が結ばれたことで、中東情勢にはどのような影響を与えるか。
A.中東ではおととし10月に始まったガザ地区の戦闘がレバノン、イエメン、そしてイランへと次々に飛び火した。各地でイランの支援を受ける勢力がハマスとの連帯を掲げてイスラエルとの戦闘に踏み切ったため。それだけに地域紛争の発端となったガザ地区で戦火が止めば、情勢は沈静化に向かう転換点になる可能性はある。
一方、イラン側はこの10年あまり各地で勢力を拡大し、イスラエル包囲網を築いていたがイスラエルによる激しい攻撃で後退を余儀なくされた。シリアのアサド政権の崩壊もこの延長上にあると言ってよく、中東のパワーバランスはこの1年あまりの紛争で、大きく塗り変わったと言える。まずは停戦合意を着実に実施し、深刻な人道危機に苦しむガザの人々に一刻も早く食料や医薬品を届けることが急務となっている。
立山良司 防衛大名誉教授に聞く
アメリカのバイデン大統領は15日、ホワイトハウスで演説し、イスラエルとハマスが6週間、停戦することなどで合意したことについて「これは、私がこれまで経験した中で最も厳しい交渉の1つだった。ガザ地区での戦闘は停止し、まもなく人質は家族のもとに戻る」と述べて歓迎しました。
そして今後6週間のうちに、恒久的な停戦に向けて必要な協議が行われるとして期待感を示したうえで、協議に6週間以上かかる場合、停戦は継続すると説明しました。
また「今回の交渉は私の政権のもとで進展したものだが、合意の大部分は次の政権が実現することになる。ここ数日、われわれは1つのチームとして話してきた」と述べて来週20日に発足するトランプ次期政権のチームと連携してきたと明らかにしました。
そのうえで「われわれは次のチームに、中東のよりよい未来のための真のチャンスを引き継ぐことになる。私は彼らがそれを受け止めることを願っている」と述べました。
アメリカのトランプ次期大統領は15日、SNSに、去年11月の大統領選挙での自身の勝利が合意に結びついたという認識を示したうえで「私の政権が平和を求め、すべてのアメリカ人と同盟国の安全を確保するために交渉することを全世界に示した」と投稿し、自身の成果だと強調しました。
そして「この合意を受けて、私の国家安全保障チームは、イスラエルや同盟国と緊密に協力し、ガザ地区が2度とテロリストにとっての安全な避難場所にならないよう引き続き、取り組む。われわれはこの地域全体で強さを通じた平和を進めていく。これは、アメリカ、そして世界にとって、すばらしいことの始まりにすぎない」としました。
アメリカ国務省のミラー報道官は15日、NHKの単独インタビューに応じ、イスラエルとハマスが合意に至った背景について「トランプ次期政権も交渉に参加し『われわれも合意内容を支持する。アメリカを信頼してほしい』と言ったことが重要だった。それが、最終的に当事者たちが合意を受け入れるための重要な要因だったと考える」と明らかにしました。
そして、今後、トランプ次期政権がどのようなかたちで協議を進めていくかは分からないとしていますが、今回の合意内容については次期政権も支持していると強調しました。
ミラー氏は「きょうは重要な第一歩だ。ただ、結局のところ、恒久的な停戦になるかにかかっている。その過程では厳しい協議や困難な交渉が伴うだろう」と述べ、恒久的な停戦の実現にはアメリカ政府が働きかけを続けることが欠かせないという考えを示しました。
イスラエルとハマスの停戦合意が発表されたことについて、ロシア大統領府のペスコフ報道官は16日「停戦とガザの人々の苦難の終結、さらにはイスラエルに安全がもたらされるような解決は歓迎されるべきものだと考えている。ロシアは、今回のプロセスには関与していない」と述べました。
エジプト大統領「人道支援を加速させることが重要」
仲介国のエジプトのシシ大統領は15日、自身のSNSに「1年以上にわたる懸命な努力の末、停戦合意に達したことを歓迎する。この合意とともに、2国家解決による持続的な平和が達成されるまで、現在、壊滅的な状況下にあるガザの人々への人道支援を加速させることが重要だ」と投稿しました。
また「エジプトはパレスチナの人々の正当な権利をこれからも守っていく」としています。
フランスのマクロン大統領は15日、SNSに投稿し「15か月に及ぶ不当な苦しみを経て、ガザの人たちにははかりしれない安心感がもたらされ、人質とその家族には希望がもたらされた」として合意を歓迎しました。
そして、停戦合意は尊重されなくてはならないとしたうえで「人質は解放されるべきで、ガザの人々は支援を受けるべきだ。政治的な解決が必要だ」と強調しました。
ドイツのショルツ首相は15日、SNSに「よいニュースだ」と投稿して歓迎した上で、合意が着実に履行されるよう期待感を示しました。そのうえで、「この停戦は戦争の恒久的な終結とガザ地区の劣悪な人道状況の改善への扉を開くものだ」として、ガザ地区での戦闘の終結と人道状況の改善のための取り組みを続ける考えを強調しました。
英首相「切実に待ち望んでいたニュース」
イギリスのスターマー首相は声明を出し「何か月にもわたる流血、そして数え切れないほどの命が失われた末に、これはイスラエルとパレスチナの人々が長い間、切実に待ち望んでいたニュースだ」として、人質の解放に期待を示すとともに、この停戦をガザ地区への人道支援の大幅な増加につなげる必要があると強調しました。
そのうえで「われわれはイスラエルとパレスチナの人々にとって永続的な、よりよい未来をいかに確保するか、注視しなければならない。その基盤となるのはイスラエルの安全・安定とともに、パレスチナ国家の主権と発展を保証する、2国家共存による解決だ」と呼びかけました。
中国外務省の郭嘉昆報道官は、16日の記者会見で歓迎の意を示したうえで、「ガザの全面的かつ永続的な停戦が実現することを期待する。関係各国が停戦を契機として地域の緊張緩和を推進することを心より望む」と述べました。
そのうえで「中国は国際社会とともに中東の平和と安定を実現するために不断の努力を続けていく」と述べました。
林官房長官は午前の記者会見で「合意が当事者間で成立したことをわが国として歓迎する。わが国が求め続けてきた人道状況の改善と事態の沈静化に向けた重要な一歩だ。合意達成に尽力したすべての関係者の努力を評価するとともに当事者に対し合意の誠実かつ着実な履行を求める」と述べました。
そのうえで「引き続き関係国や国際機関と緊密に意思疎通を行いながらガザの人道状況の改善や復興、統治に関する国際的な努力に積極的に関与するとともに『2国家解決』や長期的な地域の平和と安定の確立に向けた外交努力を重ねていく」と述べました。
停戦合意の発表を受けて国連のグテーレス事務総長は15日、国連本部で会見し「私たちの最優先事項はこの紛争によって引き起こされた途方もない苦しみを和らげることだ」と述べ、ガザ地区への人道支援の拡大を急ぐ考えを示しました。
そのためには「この合意によりガザ地区での支援物資の輸送を妨げている安全保障上や政治的な障害が取り除かれることが不可欠だ」と述べ、すべての当事者に停戦合意の完全な履行を求めました。
また「今回の合意は重要な第一歩だ」としながらも「占領を終わらせ、イスラエルとパレスチナが平和と安全のうちに共存する2国家解決を実現することは、依然として緊急の優先事項だ」と強調しました。
パレスチナのガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘はおととし10月7日のハマスの奇襲攻撃をきっかけに始まりました。ハマスがイスラエルに対して大規模なロケット攻撃のほか越境攻撃を仕掛け、およそ1200人を殺害したほか、人質としておよそ250人をガザ地区に連れ去りました。これを受けて、イスラエル軍はハマスの壊滅と人質の解放を掲げて、その日のうちにガザ地区での軍事作戦に乗り出します。激しい空爆を行うとともにガザ地区を完全に封鎖して電力などの供給も止め、水や食料も不足する中、人道状況が急速に悪化していきます。
10月下旬にエジプトとの境界にあるラファ検問所が開放され、支援物資の搬入が始まる一方、イスラエル軍はガザ地区での地上作戦に踏み切ります。
11月にはハマスの重要な拠点になっているとして地区最大の病院「シファ病院」に突入するなど作戦を拡大し、国際社会から人道危機への懸念が高まります。11月下旬にカタールなどの仲介で戦闘の休止が実現し、7日間の休止期間に人質105人が解放され、イスラエル側も刑務所に収容していたパレスチナ人240人を釈放しました。軍事作戦を再開したイスラエル軍はガザ地区の北部に続き、中部や南部で地上作戦を進め、避難者が集まる学校なども空爆の被害が相次ぎます。
イスラエル軍は、去年5月には多くの住民が避難していた地区の最も南のラファで地上作戦を始め、エジプトの境界沿いに広がる緩衝地帯「フィラデルフィ回廊」を制圧し、支援物資の搬入の拠点となっていたラファ検問所も閉鎖されます。こうした中、アメリカのバイデン大統領はガザ地区での停戦に向けて3段階からなる新たな提案を発表し、断続的に協議が続けられました。しかし、イスラエル側が「フィラデルフィ回廊」などでの軍の駐留の継続を求めたのに対し、ハマス側は完全撤退を求め、協議は難航します。
そして、去年7月にイランの首都テヘランを訪れていたハマスのハニーヤ最高幹部が殺害されたのに続き、去年10月には、イスラエル軍がガザ地区南部で行った作戦によって、強硬姿勢を貫いてきた後任のシンワル最高幹部も殺害されました。
こうした中、去年11月にはハマスに連帯するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルの停戦が成立します。さらに先月8日には、ヒズボラと同じくイランが支援するシリアのアサド政権が崩壊しました。シリアからの補給路が断たれ、ヒズボラの弱体化が鮮明となる中、ハマスの孤立化が一層、深まりました。
今月20日に就任するアメリカのトランプ次期大統領は、選挙戦でガザ地区の戦闘を終わらせると強調し、ハマスに対し、みずからの就任までに人質を解放しなければ「大きな報いを受ける」などと警告していました。
ガザ地区での死者は1年3か月以上におよぶ戦闘でこれまでに4万6000人を超え、子どもを含む多くの住民が犠牲になっています。