欧博abgミャンマー大地震 “約1700人が死亡” 軍発表 日本人1人と連絡とれず 隣国タイでも少な

目次を開く

目次

目次へ移動

目次

日本時間の28日午後に発生したミャンマー中部を震源とするマグニチュード7.7の大地震では、第2の都市マンダレーや首都ネピドーなどで大きな被害が出ています。

日本政府は、JICA=国際協力機構の職員や医療関係者、あわせて5人からなる調査チームを現地に派遣することを決めました。調査チームは30日夜遅くミャンマーに向けて日本を出発する予定で、緊急援助隊の派遣を検討するため現地のニーズや治安状況などを確認するということです。また政府は、生活必需品を被災地に提供することを決め、準備を進めているということです。

NHKの取材班は30日、首都ネピドーに入り、建物が壊れたり道路に亀裂が入ったりするなどの被害を確認しました。このうち、数十もの店が建ち並ぶ商業施設では、建物の外壁が大きく壊れたり、窓ガラスが割れたりするなどの被害が出ていて、携帯電話ショップでは、建物全体が崩れ落ち従業員2人が下敷きになって亡くなったということです。

被災地では、倒壊した建物の中にいまだ多くの人が閉じ込められているものとみられますが、USGS=アメリカの地質調査所によりますと、日本時間の夕方にもマグニチュード5を超える地震を観測していて、救助活動への影響が懸念されます。

“被災地では30日から2週間 戦闘停止”

今回の地震を受けて、ミン・アウン・フライン司令官は国際社会からの支援を歓迎する姿勢を示しています。

一方、4年前のクーデター以降、軍と対立する民主派勢力が発足させたNUG=国民統一政府は29日に声明を発表し、救助活動を優先するため被災地では30日から2週間の戦闘の停止を明らかにするとともに、国際的な支援団体の活動に協力する意向を示しました。

こちらはNHK職員の知人の男性が29日撮影したマンダレー市内のマンションの崩壊現場です。このマンションはもともとは12階建てで、低層階の部分が大きく崩壊し、上層階がガレキの上に積み重なるようなかたちに崩れています。
オレンジ色の服を着て救援活動をしているのは、災害時に活動する市民ボランティアです。建物の中には人が取り残されているとみられ、救助活動を行なっています。
しかし、現場には重機などがないほかボランティアの地震に備えた日常的な訓練が十分でないこともあって、救助作業は難航しているということです。
NHKの取材に対し、映像を撮影した男性は「マンダレー市内には捜索のため重機を無料で貸し出している業者がいるものの、数が圧倒的に足りない」と話していました。

現地時間29日午前中の、マンダレー市内にある病院の中庭です。
撮影したNHK職員の知人男性によりますと、地震発生直後から大勢のけが人が病院に搬送されたものの、病院の中には収容しきれず、屋外で手当てをせざるを得ない状況だということです。
現地では医療スタッフも医薬品も不足しているほか、多数の遺体を収容するバッグも足りない状況だということです。
男性は、衛生環境の悪化を心配していました。

現地時間の29日昼前、マンダレー市内の病院で患者たちが行列して食糧の配給を受け取っている様子です。NHK職員の知人男性が撮影しました。
映像で配給を行っているのは市民ボランティアだということです。撮影した男性によると、被災地では飲料の不足に加え、高温と食料品を売る店の多くが崩壊してしまったため、お金があっても食料品が買えない状態だということです。

こちらは震源に比較的近い、ミャンマー北部の山岳地帯の町、ザガインで29日夜に撮影されました。NHK職員の知人で、行方不明者の捜索活動などにあたっている地元の男性が撮影しました。映像からは、暗闇の中人々が、手持ちのライトでがれきを照らしながら、捜索している様子が確認できます。
男性によりますと倒壊したのはイスラム教のモスクで、地震発生時に建物内にいた少なくとも40人のうち、これまでに35人の死亡が現場で確認されたほか、救出した1人もその後、死亡が確認されたということです。
男性によりますとザガイン周辺は仏教徒が多い地域ですがモスクも5つあり、そのうち3つが倒壊して、あわせておよそ200人が死亡または行方が分からない状態だということです。
撮影した男性は「包帯や消毒液、ガーゼ、解熱鎮痛剤、胃腸薬、風邪薬などの医薬品に加え、水や食べ物も不足している」と窮状を訴えています。

衛星画像から確認できた被害

被害の状況は、衛星画像からも確認できます。
人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」からNHKが入手したのは、震源に近いミャンマー第2の都市マンダレーと、隣接するザガインの画像で、地震前の今月23日と地震後の29日、同じ場所を撮影したものです。

このうちマンダレーとザガインを結ぶ橋の画像からは、地震後には何か所も大きく崩れて川に落ちているのが確認できます。

また、ザガインの画像では、白い仏塔が原形をとどめていないほど崩れています。

このほか、マンダレーの地震前の画像では、青い屋根の建物などが密集して建ち並んでいますが、地震後の画像では多くの建物が倒壊していることがわかります。

現地では、いまも各地で倒壊した住宅などの下に取り残されている人たちが多数いるとみられ、被害が広範囲にわたるため救援活動は難航しているということです。

国際的な支援が求められる中、28日、ロシア非常事態省は、救助隊や災害救助犬などを派遣したと発表しました。また、中国も相次いで救援チームを派遣しています。インド政府も29日、医薬品や支援物資とともに軍の医療チームを輸送機で派遣したことを発表しました。

NEW

長さ約1500キロの活断層の一部がずれ動いたか

ミャンマーで起きた大地震について、過去に現地調査した専門家は、地震活動が活発な活断層の空白域がずれ動いたとみられ、記録が残っている1800年代以降で最も規模が大きいとしたうえで余震などに注意が必要だと指摘しています。

活断層が専門で同志社大学の堤浩之教授によりますと、今回の地震は、ザガイン断層と呼ばれる活断層で起きたということです。

ザガイン断層はインド大陸を含むインド・オーストラリアプレートがヒマラヤに向かって移動する過程でできた、長さおよそ1500キロの南北にのびる活断層で、近畿から九州にのびる長さ400キロあまりある中央構造線断層帯よりもはるかに長く世界有数の規模だということです。今回はザガイン断層の一部の200キロほどの領域がずれ動いたとみられ、断層を境に向かい側が右にずれる「右横ずれ断層」というタイプの地震だとしています。

ザガイン断層は地震活動が非常に活発で、記録が残っている1800年代以降でたびたびマグニチュード7クラスの地震が起きていたということです。堤教授が過去に現地で行った地中の調査では、1つの領域で起きる地震の間隔が100年から200年とみられることが分かっていて、マンダレーを中心とした南の領域は1839年を最後にマグニチュード7クラスの地震が起きていなかったため、いわゆる空白域だったとしています。

今回の地震の規模はマグニチュード7.7と推定されていますが、記録が残っている中でザガイン断層で起きた地震では最大とみられています。

堤教授は「しばらくは余震のほか、周囲で誘発される地震が起きないか注意する必要がある」と話しています。

【動画】女性救出の瞬間 地震発生から約30時間(22秒)

AFP通信が29日に配信したミャンマー中部のマンダレーの映像では、倒壊した建物から女性1人が救出される様子が確認できます。
女性が救出されたのは地震の発生からおよそ30時間後だったということで、救助隊員ががれきの中から女性の体を引きあげたあと、担架に乗せて救急車に運び込んでいきました。救助活動は数時間におよんだということで、現場で見守っていた夫は担架で運ばれてきた女性と抱きあって再会を喜んでいました。

【動画】国際空港で大きな被害か(13秒) 地震発生前後の衛星画像比較

大地震で、首都ネピドーにある国際空港では大きな被害が出ているとみられます。
去年5月に空港周辺を撮影した衛星画像では、滑走路の東側に管制塔が立っていることが確認できます。ところが、NHKが入手した、地震発生から1日以上たった日本時間の29日午後4時すぎに撮影された画像では、管制塔が根もとから南東方向に倒れ、周辺にがれきのようなものが散乱している様子がわかります。
ロイター通信は29日、消息筋などの情報として、この空港が一時的に閉鎖されているとしたうえで、管制塔は倒壊して運用できなくなっていると伝えていました。

隣国タイでもこれまでに少なくとも9人死亡

一方、この地震で、隣国タイの首都バンコクでも建設中の高層ビルが倒壊し、地元当局によりますと、これまでに少なくとも9人が死亡し、70人以上と連絡がとれなくなっているということです。

ビルが倒壊した現場では、30日も24時間体制で救出活動が続けられています。ただ大量のがれきで行方不明者の捜索は、思うように進んでいません。救助隊を乗せたゴンドラをクレーンでつるし、これまで捜索ができていなかったがれき上部の状況の確認も行われています。

倒壊したビル タイの首相が調査と1週間以内の報告を指示

今回の地震で倒壊したビルをめぐっては、バンコクに数多くある高層ビルの中でこの建物だけが完全に倒壊したとみられることから、タイ政府は、設計や構造などに問題がなかったか、専門家を交えた調査を行うことにしています。

倒壊したのは、タイ政府の会計監査局が入る予定だった地上33階建ての建設中のビルで、タイの建設大手と中国の国有企業の現地法人が合弁事業として2020年から建設を進めていました。

これについて、この中国の国有企業は去年、会社が海外で初めて手がける高層ビルのプロジェクトだとインターネット上で発表していました。しかし、この発表は、地震のあと閲覧できなくなっていて、タイや香港のメディアは会社側が削除したとみられると報じています。

バンコクではこのビルのほかにも建設中のものを含め数多くの高層ビルがありますが、建物全体が完全に倒壊したケースはほかにはないとみられています。このため、タイのペートンタン首相は地震が起きた今月28日に倒壊現場を視察した際、建物の設計や構造などに問題がなかったか専門家を交えた委員会を設置して調査を行い、1週間以内に報告するよう指示しました。

バンコクで暮らす日本人の間でも深刻な影響広がる

タイのバンコクには世界でもアメリカのロサンゼルスに次いで最も多い5万人に上る在留邦人が暮らしています。今回の地震では、多くの建物にひびが入るなどの被害が報告されていて、バンコクで暮らす日本人の間でも深刻な影響が広がっています。

このうち、日本企業の駐在員の40代の男性は自宅があるマンションの建物と建物をつなぐ連絡橋などが損傷しました。管理会社が安全を確認しているため建物への立ち入りが制限され、地震が起きた28日から自宅に帰ることができず、同僚の家やホテルに身を寄せているということです。男性は「着替えなど必要な物は買いに行くことができたが、持ち歩く荷物が増え、不便さを感じる」と話していました。また、「タイで地震に遭遇するとは全く想定しておらず、自宅にも帰れず、ショックが大きいです。まだ部屋の中の状況を確認できていないので、いったいどうなっているのか不安です」と話していました。

単身赴任の40代の男性は、自宅マンションの共用部分でろうかの天井がはがれ落ち、むき出しの状態になったほか、天井や壁に多数のひびが入っているということです。男性は「部屋も亀裂がたくさんあるが、それでも生活はできている。アパートが壊れなければいいなと思う」心配そうに話していました。

また30代の日本人の女性も、マンションのエントランスで壁の一部が剥がれ落ち、コンクリートがむき出しになったり、部屋の壁にひびが入ったりしているということです。女性は「家で生活はできているが、次の日の朝までこの建物が残っているのか、不安はある。本当はホテルに移動したかったが、家に帰れない人もいるので、不安なまま生活をしないといけない」と話していました。

なぜ遠く離れたバンコクで被害が

建築構造が専門で東京科学大学の和田章名誉教授は、揺れ方などから「長周期地震動」によるとみています。

「長周期地震動」は周期の長いゆっくりとした大きな揺れで、超高層ビルをゆっくりと大きく揺らします。もうひとつの特徴が、震源から離れても揺れが衰えにくい点です。2011年の東日本大震災では、震源からおよそ770キロ離れた大阪の超高層ビルも大きく揺れました。今回のミャンマーの地震でも「長周期地震動」が1000キロ以上離れたバンコクまで到達した可能性は十分ありうるとしています。

さらにバンコクの地盤が影響したと指摘する専門家もいます。
地盤工学が専門の東京科学大学の田村修次教授は、バンコクは軟弱地盤が厚く堆積しているとしたうえで、揺れを増幅させた可能性があると指摘しています。また、地震が少ないバンコクでは建物の耐震性能が高くないため、被害が拡大した可能性があるとしています。

NEW

「超せん断破壊」非常に大きな破壊力を生みタイの方向に進んだか

また筑波大学の八木勇治教授は、地震波から断層の破壊のしかたを解析しました。

八木教授によりますと、最初は震源から南側に10秒ほど破壊が進みましたが、そのあと、北側と南側へ両方向に分かれ、破壊はおよそ70秒続いたということです。また、破壊のスピードが「S波」と呼ばれる横揺れの地震波と同じか、それを超える「超せん断破壊」という現象が起きた可能性があり、非常に大きな破壊力を生み出したのではないかと分析しています。

今回の地震は、地盤が水平方向にずれ動く「横ずれ断層」のタイプでしたが、横ずれ断層では「超せん断破壊」が起こりやすいということです。また、破壊が進んだ方向に隣国のタイがあったため、タイでも大きな被害が出たとみられるとしています。

八木教授は「超せん断破壊によって理不尽なほどに破壊的な波が形成されることがある。今回の震源の南の方向は割れ残りがあり、さらにひずみがたまっている可能性がある。今後そうしたリスクを考えていく必要がある」と話しています。

ユニセフ支援責任者「電気止まり通信回線も遮断」

ユニセフ=国連児童基金の東アジア・太平洋地域事務所で緊急支援責任者を務めるトレバー・クラークさんが29日夜、オンラインでNHKのインタビューに応じ、震源地に近いマンダレーの状況について「多くの人々が被害を受けている。具体的な人数は分からないが、亡くなったり、けがをしたりした子どもは、かなり多いとみられる」と述べました。そのうえで「インフラへの被害は大規模で、電気が止まり通信回線も遮断されている。現地にいるスタッフと連絡を取り合うことも難しい」と述べ、情報収集が難しくなっているとしています。

また、首都ネピドーで主要な病院が倒壊したという情報があることから、マンダレーなどでも医療機関や水道設備が被害を受けているおそれがあると指摘しています。そして「まずはテントや防水シート、衛生キットなどを届けようとしている」として、30日朝にはさらに多くのスタッフがマンダレーに向けて出発すると明らかにしました。

一方、ミャンマーでは軍と民主派勢力などとの戦闘が続いていることや、サイクロンや大規模な洪水に見舞われてきたことを踏まえ「ミャンマーの子どもたちは暴力的な紛争や自然災害を経験してきた。今回の地震により壊滅的で悲痛な状況がさらに重なった」として、国際社会が長期的に支援していく必要性を訴えました。

インド 軍の医療チームをミャンマーに派遣

インド政府は29日、軍の医療チームをミャンマーに派遣したことを発表しました。医療チームは118人で構成され、医薬品を積んで軍の輸送機で出発し、ミャンマーの被災地で医療支援にあたることになっています。また、あわせて50トンの食料やテントなど緊急支援物資も送り、ミャンマーの最大都市ヤンゴンの空港に現地時間の29日午前、支援物資を積んだインド軍の輸送機が到着しました。

インドのモディ首相はSNSへの投稿で、ミャンマー軍のトップミン・アウン・フライン司令官に電話で犠牲者に哀悼の意を表したとしたうえで、「インドは親しい友人であり、この困難な時にミャンマーの人々に寄り添う」として支援を続ける姿勢を強調しました。

日本で暮らす人の中には家族の安否確認できた人も

日本で暮らすミャンマー人の中には、ミャンマー中部で起きた大地震の被災地に住む家族の安否が確認できたという人もいます。

横浜市に住むミャンマー人の大学講師、ティンウィンさん(70)の弟や妹は今回の地震の震源地に近い大都市・マンダレーに暮らしています。

地震のあと、すぐに弟と電話がつながり無事を確認できましたが、家族が住んでいる地区では複数の人が倒壊した建物の下敷きになるなどして死亡したり、けがをしたりしたということです。

また、家族が住んでいる建物の壁には大きなひびが複数入っているほか、余震が続いているため、家族はトラックの荷台や、路上で寝泊まりしているということです。

ティンウィンさんの弟によりますと、周辺の住民も多くが建物の中ではなく路上で寝泊まりをしている状態だということです。

ティンウィンさんと家族はイスラム教徒ですが、友人から聞いた話として地震の発生時刻が礼拝の時間と重なり、多くの人がモスクの中にいたため倒壊した建物の下敷きになって亡くなったと聞いているということです。

マンダレー市内では救助活動が始まっていますが、倒壊した建物が多いため、ティンウィンさんの家族が住む地区にはまだ救助隊が来ていないということです。

住民の暮らしも厳しくなっていて、地震発生から2日が経ったいまも多くの住民が家で調理できないため、商店を営むティンウィンさんの家族や、周辺のレストランなどが食料や水を提供するなどしてしのいでいるということです。

ライフラインも影響を受けていて、水が不足しているため見つかった遺体を洗うことが難しくなっているほかインターネットへの接続が断続的にしかできない状態が続いているということです。

ティンウィンさんは「現地では余震が続いていてさらに建物が倒壊する恐れもあり、心が痛いです。周りの国の人たちにも支援してもらいたい。まだ救助されていない人も多いので、早く助かってほしい」と話していました。

2025-04-05 20:47 点击量:7