岩手 大船渡 山火事 新たな延焼確認されず 一部の避難指示解除を検討 消火活動続く

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大船渡市の山林火災は発生から8日となりますが、これまでに市の面積の9%にあたるおよそ2900ヘクタールが焼失しました。

大船渡市によりますと、5日からの雨の影響で火の勢いは弱まっていて、新たな延焼はありませんが、土の中の「熱源」が複数の場所で確認されているということです。

2日ぶりに自衛隊のヘリコプターなどによる上空からの消火活動を再開したほか、地上の消防隊が消火を行っていますが、鎮火のめどは立っていないということです。

今回の火災で、三陸町の綾里全域と越喜来の3つの地区、それに赤崎町の13の地区に避難指示が出されています。

対象はあわせて1896世帯 4596人で、市の14%にあたる住民です。

【三陸町綾里】
  全域 850世帯 2060人

【三陸町越喜来】
 ▽甫嶺東地区 47世帯 104人
 ▽甫嶺西地区 58世帯 145人
 ▽上甫嶺地区 36世帯 84人

【赤崎町】
 ▽森っこ地区 39世帯 107人
 ▽山口地区 104世帯 257人
 ▽生形地区 3世帯 4人
 ▽大洞地区 89世帯 185人
 ▽後ノ入地区 161世帯 364人
 ▽宿地区 19世帯 40人
 ▽長崎地区 58世帯 158人
 ▽外口地区 48世帯 152人
 ▽蛸ノ浦地区 203世帯 475人
 ▽清水地区 54世帯 142人
 ▽永浜地区 50世帯 125人
 ▽大立地区 54世帯 140人
 ▽合足地区 23世帯 54人

解除は状況を見て慎重に判断

大船渡市は6日午前中の会見で、延焼の状況などから赤崎町の大船渡湾側の一部の地区で避難指示の解除を検討していると発表しましたが、夕方の会見で、さらに三陸町越喜来の甫嶺地区についても解除の検討を始めていることを明らかにしました。

一方で、赤崎町では付近の山間部で煙が確認され、日中に消火活動を行ったということです。

このため、大船渡市は6日中の避難指示の解除はないとしていて、今後、延焼の範囲や煙の状況などを見て慎重に判断する方針です。

またそれ以外の地区については、火の勢いや延焼の可能性、ライフラインの復旧など、総合的に判断しながら地区ごとに解除を検討していくということです。

火災発生から8日となり、避難している人たちの疲労もたまってきています。また、地域経済への影響も懸念されています。

大船渡市を含む沿岸部では、7日以降の1週間は晴れやくもりの予想で、空気の乾燥する日が続く見通しで、鎮火に向けて予断を許さない状況が続いています。

炎や煙は見られず 黒く焼け焦げた跡確認

6日午前11時ごろから11時半すぎにかけて、NHKのヘリコプターが大船渡市赤崎町合足地区の付近や、三陸町綾里地区の中心部を上空から撮影した映像では、山の広い範囲で黒く焼け焦げた跡が確認できました。

一方、映像で確認できた範囲では、炎や煙は見られませんでした。また、大船渡市中心部の河川敷では、自衛隊のヘリコプターが給水のために着陸したと見られる様子が確認できました。

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天皇皇后両陛下 側近通じてお見舞い

天皇皇后両陛下は、大規模な山林火災が続いている岩手県の達増知事に6日、側近を通じてお見舞いの気持ちを伝えられました。

宮内庁によりますと、両陛下は、岩手県大船渡市で火災が続き、死者が出たほか、広大な山林や多くの建物が焼失したことなどを受けて、被害に遭った人や避難所に身を寄せている人、それになりわいに支障が出ている人に、お見舞いの気持ちを持たれているということです。

また、東日本大震災で避難生活を経験した人たちが当時のことを思い起こして不安な思いをしていることを案じているということで、こうした気持ちを側近を通じて岩手県の達増知事に伝えられました。

地元わかめ販売 「買い物に来た人から応援」

東京・銀座にある岩手県のアンテナショップは、6日と7日の2日間、大船渡市三陸町綾里でとれた特産のわかめが販売されています。

ふだんであれば、この時期収穫の最盛期を迎えるわかめですが、山林火災の影響で、綾里地区全域に避難指示が出されているため、収穫作業ができなくなっています。

今回販売されているのは、火災の前に収穫し保管していた「早採りわかめ」480キロで、訪れた人たちが次々に買い物かごに入れていました。

大船渡市から販売に駆けつけた佐々木晶生さんは「地元にいると、常にサイレンや自宅の状況を気にするしかない避難生活で、少しでも前向きになろうと販売を始めたが、買い物に来た人から応援されることが多く、私自身が元気をもらっている」と話していました。

避難所のラジオ体操で支援

大船渡市で高校を卒業したばかりの18歳の男性が、避難所で生活をしている人たちに体操でリフレッシュしてもらう取り組みを行っています。

この取り組みは、大船渡市出身の細谷翼さん(18)が避難所となっているリアスホールで行っています。

6日午後にはおよそ20人が集まり、細谷さんのかけ声やラジオ体操の音楽にあわせて腕を回したり、背筋を伸ばしたりして体操に取り組んでいました。

細谷さんは市外の高校に下宿生活をしながら通い、今月1日に卒業したばかりで、来月からはスポーツトレーナーの民間資格が取得できる宮城県内の専門学校に進学するということです。

しかし、山林火災の影響で両親や親しい人たちが避難所での生活を余儀なくされているのを知って何かの役に立ちたいと地元に帰ってきたということです。

避難している60代の男性は「体が柔らかくなりました。山林火災で生活が変わってしまい大変な状況ですが、体操でリフレッシュするという取り組みはとてもいいです」と話していました。

細谷さんは「避難者どうしが会話を楽しむきっかけとしてもこの体操を活用してほしい」と話していました。

消火にあたった隊員は…

大船渡市で続く山林火災で、消火活動にあたった宮城県の消防の幹部が取材に応じ「難しい判断が求められ、隊員の疲労も蓄積していた」などと活動の一端を明かしました。

先月26日から続く大船渡市の山林火災の現場には全国の消防隊員2000人余りが派遣され、消火活動にあたっています。

このうち、宮城県南三陸町の南三陸消防署から4日までの4日間、大船渡市に派遣され、12人の隊員を率いたのが千葉誠消防司令です。

千葉消防司令は現場の状況について「複数の場所から煙や炎が見えてどのように対処するのか、難しい判断を求められた。土の中からも煙が出ていたので土を掘りながら消火してなるべく完全消火に近づけるようにした。退避せざるを得ないくらい火の勢いが強いところもあった」と説明しました。

また「夜間は日中と異なり、火の形や状況が分かりやすくなるが、暗闇の中に横一線に火が見える状況に恐怖を感じた」と当時の心境を明かしました。

一方、山林火災での消火活動の課題について千葉消防司令は「水の確保が特に難しかったのに加え、長時間の活動や休憩時間の少なさから隊員の疲労も蓄積していた」と話していました。

空き教室借り授業 中学生たち体操などで体動かす

山林火災の影響のため休校している大船渡市の中学校が市内にある別の中学校の教室を借りて授業を行っています。

大船渡市の東朋中学校は山林火災で避難指示が出されている地域にあるため、休校の措置が取られています。このため東朋中学校から直線距離で南西に2キロ余り離れた大船渡中学校の空き教室を借りて5日から午前中だけ授業を行っています。

6日は生徒たちが教室内で体操をするなど体を動かしたり、教師から配られた理科のプリントの問題を解いたりしていました。

1年生の熊谷翔さんは、「きのうから友だちと会えるようになり、きょうは一緒に運動ができてすごく楽しかったです。自分たちの中学校に戻って3年生の卒業式をやりたいです」と話していました。

市内の親戚の家に避難している2年生の佐藤心さんは、「久しぶりに友だちの顔を見られて安心しました。避難先で自習はできていましたが、わからないところも多く、先生たちに教えてもらうことができてありがたいです」と話していました。

市教育委員会によりますと山林火災のため綾里小学校と赤崎小学校でも休校の措置が取られていますが、児童たちの避難先に近い学校の空き教室などを借りて教員たちが学習支援を行っているということです。

大船渡市に被災者生活再建支援法を適用

大船渡市の森林火災では、これまでに市の面積の9%にあたるおよそ2900ヘクタールが焼失し、建物の被害は少なくとも78棟にのぼるほか、内閣府によりますと確認できているだけで10世帯の住宅が全焼したということです。

このため、岩手県は大船渡市に対し、被災者生活再建支援法を適用する方針を決めました。

この法律の適用に伴い、住宅を再建する際に支援金が支給され、金額は
▽全壊や解体、それに住宅に住めない状態が長期間継続した場合が最大で300万円、
▽大規模半壊が最大で250万円、
▽中規模半壊が最大で100万円となっています。

この法律が2001年に施行されてから、火災で適用されるのは
▽2016年に新潟県糸魚川市の中心部で住宅や店舗あわせて140棟あまりに被害が出た火災と
▽2021年に松江市で住宅など30棟あまりや山林が焼けた火災に続いて3例目です。

石破首相 “被災者生活再建支援法 適用の見通し”

石破総理大臣は参議院予算委員会で、岩手県大船渡市の山林火災について、住宅が全壊するなどした世帯に支援金を支給する「被災者生活再建支援法」を適用できる見通しが立ち、6日午後4時に公表予定だと明らかにしました。

そのうえで国が復旧にかかる費用を支援する「激甚災害」への指定については「査定が必要だが、衛星による写真などで早期の査定が可能となるよう急いでいく。早期の鎮火に努めるとともに、被災者にできるかぎりの支援をしていく」と述べました。

また、政府による現地の視察については「現場に負担がかからないよう、政務三役をはじめとする者の派遣を、適宜適切に判断していく」と述べました。

自民党会合 財政支援求める意見

大船渡市の山林火災を受けて、自民党が開いた災害対策の会合では、政府に対し、消火活動や被災者の支援に全力を挙げるとともに、被災自治体への財政支援を求める意見が相次ぎました。

自民党は6日、災害対策特別委員会の会合を開き、火災の被害状況について消防庁や内閣府の担当者から報告を受けました。

この中で、大船渡市などを選挙区とする鈴木総務会長は「まだ鎮火に至っておらず、一刻も早い鎮火が望まれる。避難所では被災者や運営する職員の疲労が高まっており、党としても万全を期して対応していきたい」と述べました。

その上で、大船渡市の渕上市長が支援を要請するため、来週にも石破総理大臣と面会する方向で調整していることを明らかにしました。

出席した議員からは、消火活動や被災者の生活支援に全力を挙げるよう求める意見や、被害が広範囲に及んでいることから、地元自治体の負担が軽減されるよう、国からの財政支援を求める声が相次ぎました。

一方、公明党も災害対策本部の会合を開き、斉藤代表は「昼夜を分かたず消火活動にあたっている関係者に心から敬意を表したい。激甚災害の早期の指定も視野に、地域の不安を取り除く対策を議論していきたい」と述べました。

2025-03-13 04:31 点击量:5